ロードレースをやっている人の会話の中にしばしば登場する言葉『〇〇秒が出た!』。ラップタイムというのはサーキットにおける速さを測るときに最もわかりやすい基準ですから、それをひとつの目安にして練習に励むのは当たり前です。レースの世界では8秒よりは7秒出した人の方がエライし、コースレコードホルダーなんて憧れの対象ですらあるでしょう。ただそれだけを追求すると迷路の入り込んでしまいかねません。
正直サーキットでのスポーツ走行を趣味とするのであれば、ラップタイムはどうでもいいといってもいい。あまりに周りとタイム差があると危険なこともありますが、タイムでクラス分けされたような走行枠なら比較的安心して自分のペースで走ることが出来ます。趣味のスポーツ走行では(自分と周りの)安全を確保した上で、気持ちよく走ることが最も大切です。その中で自分の改善点を見つけて少しずつタイムアップ出来ればいうことないでしょう。
しかしこれがレースになるとそうも行きません。0.1秒でも速く走るために自分の走りの無駄を分析し、セッティングや走り方を見直してタイムを削り取るわけです。ただここで注意しないといけないのが、1周を速く走るためだけにタイムを詰めるのではないということです。レースの最終的な目的は決勝レースで誰よりも早くゴールラインを駆け抜けるということ。予選でポールポジションを取っても、決勝で一番になれなければ意味がありません。もちろん決勝を有利に戦うために予選ポジションが大切なのはいうまでもありませんが。
スプリントレースの短い決勝の中でも、マシンのコンディションは刻一刻と変化します。特にタイヤは距離と共にパフォーマンスが低下しますので、スタート時とゴール時ではその変化を考慮しなければなりません。新しいタイヤはよくグリップします。当然深いバンク角から大きくスロットルを開けても滑りにくいわけです。その分サスペンションもよく動きます。これがレース終盤はグリップが低下しますので、新品タイヤだけに合わせたセッティングでは問題が露呈する可能性があります。たとえレース序盤にペースを上げても、後半タイムを大きく落しては意味がありません。ですから注目すべきはラップタイムではなく、レースタイム(決勝レースがスタートしてからゴールするまでのトータルタイム)です。これを前回のレースよりも1秒でも縮めるためにはどうしたらいいか考えるべきなのです。
motoGPを見ていてもFP1~3はセッティングを繰り返しますが、FP4では多くのライダーが中古タイヤを履いてロングランをこなしています。中古タイヤの距離を伸ばすことでどういった問題が出るか、またそれに対してセッティングや乗り方をどうアジャストするか。FP4はQ2進出が掛かっていない公式練習枠ですが、決勝レースを見据えた調整を加える大事なセッションなんです。
みなさんは自分のレースタイムが前回からどれくらい詰められたか把握していますか?