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KTMのmotoGP戦略

KTMが遂にmotoGP初勝利を挙げました。昨年ぐらいからP.エスパロガロが力強い走りを見せていましたが、今シーズンはそれ以外のライダーも好タイムを記録しており、初勝利は時間の問題だったとも言えます。この快進撃はD.ペドロサをテストライダーに迎えたことも大きかったと思いますが、それ以上に若手育成を地道に積み重ねてきたKTMの長期的戦略が実を結んだということではないでしょうか。

 

近年2輪ロードレースの中心は、GPクラスから市販車改造のプロダクションクラスへと移行しつつあります。もちろん2輪ロードレースの最高峰は名実ともにmotoGPですが、莫大なコストが掛かるため、各地の国内選手権など下部レースはプロダクションクラスが中心となっています。

 

motoGPマシンと言えば、世界の2輪メーカーの最先端技術が詰め込まれ極度に先鋭化したマシンです。エンジン、車体、電気などあらゆる箇所がセッティング可能、言い換えればあらゆる箇所をセッティングしなければならないのです。例えばエンジン搭載位置。プロダクションクラスではセッティング要素にはならないこんな部分も、『上へ2mm、前へ1mm』などセッティングの対象となります。ステアリングヘッドを『0.5度寝かせて2mm手前に引く』ということもごく当たり前に行われます。何が言いたいかというと、こういったきめ細かいセッティングをライダーが評価するためには、プロダクションマシンに乗っているだけでは難しいということです。

 

それを見越したかのように、KTMはmoto3、moto2でもファクトリーチームと呼べるような直系のチームを運営してきました。特にmoto2はワンメイクエンジンのため、自社製ではないエンジンを使用しなければならず、メーカーとして営業上のメリットがないクラスと言えました。それでも全クラスで直系チームを運営してきたのは、KTMとしてのマシン作りを徹底し、そのコンセプトをしっかりと理解した才能ある若手をmotoGPクラスに引き上げるために他なりません。

 

ダカールラリーでは、ワークス参戦初年度からから初優勝まで7年掛かりましたが、その後は昨年まで18連覇を飾るなど最強のチームを造り上げました。多くのカテゴリーに参戦するためには莫大なコストが必要ですが、レッドブルという潤沢な資金力を有する同じオーストリア企業のスポンサードを受けており、その意味でもKTMは万全の体制を取っていると言えます。KTMがチャンピオンシップを制するのもそう遠くない未来なのかもしれません。