やりすぎないこと

デーククラフトを開業して20年以上が経過しました。レーサー、町乗り問わず、修理とメンテナンス、カスタマイズを中心にやってきましたが、時代の流れとともに扱う車両も様変わりしてきました。以前は旧車と言えども前後17インチのハイグリップタイヤ、180や190のリヤタイヤを履かせて、強力なブレーキと高価なサスペンションを前後に奢りたいという方が多かったように思います。ただここ数年は同じカスタマイズでも、STDの素性を活かして一見ノーマル車両、でもよく見るとポイントを押さえてカスタマイズという方が主流になりつつあります。

 

画像のFZは店主の愛車、カタナは友人の1台です。どちらもSTDホイールに標準サイズのバイアスタイヤを履かせています。FZはFr16インチ、カタナは19インチと、現代では選択肢がかなり絞られるタイヤサイズです。ただそれを活かすための各部のリファインをおこなうことで、その車両の持つ特性を現代的に洗練させることは可能です。

 

エンジンは特にパワーアップなど必要なければ、点火系の見直しとキャブセッティングを行います。安定した性能とアフターサービスの充実でASウオタニを選んでいます。マフラーは、ストリートでは最も重要になるスロットル開け始めの繊細なフィーリングを優先して、敢えてSTDを使用しています。2本出しマフラーは細いリヤタイヤを持つ旧車の後姿にバランスを与えるという意味でも有効です。

 

旧車でもっとも不安になるブレーキは、ブレンボなどパーツの選択肢が豊富な社外品を使って強化。ただし効きすぎはサスペンションとのバランスをとるのが難しいため、制動力が握り始めから急激に立ち上がらないようなパーツ選択が必須です。

 

エンジンとブレーキのリファインに合わせてサスペンションも見直しますが、これも硬すぎて動かない仕様は厳禁です。あくまでもストローク感がありながらも腰砕け感が出ないようなバランスを見つけることが肝心です。この2台はSTDのフロントフォーク(内部改)とオーリンズのリヤショックを使ってセットアップしました。

 

よく言われることですが、オートバイはバランスの乗り物です。カスタマイズは、スタイルだったりパワー感だったりをUPさせるために行うわけですが、それが全体のバランスを大きく崩すようでは意味がありません。カスタムを行えば行うほど乗らなくなる(盆栽バイクになる)というのは、オートバイカスタマイズの世界ではよくあること。ポイントはやりすぎないことです。ツーリングから走行会、近所のお散歩まで、気軽に気持ちよく乗れるマシンを作り上げてください。